せっかく作ったのにいざというときに使えない契約書

契約書を作るときは当事者の利害が一致しているとき. 

そんなときに作った契約書は、内容は二の次で一応書いてあればいいというレベル. 

あまり契約書の内容にこだわると雰囲気が悪くなるから、差し障りのないのない内容にならざるを得ない. 


そんな契約書が必要になるのは当事者が仲違いしたとき. 

適当に書いた契約書でも双方の利害が絡むとなれば契約書の一言一句、重箱の隅をつつくようにチェックする. 


結局、契約書があっても当事者間で解決しないから、司法の判断に委ねることになる. 


なぜ契約書があるのにトラブルが解決しないのかと言えば、契約書に書いてあるようで実は何も書いていないに等しいから. 

最たる例が、争っている者同士が互いに譲歩し合い、争いをやめることを約束するという互譲解決条項. 


さて司法に委ねたからと言って契約書に則って解決できるとは限らない. 

理由は契約書の記載内容が法的に有効ではないから. 


公序良俗に反しようが当事者がそれで納得するなら契約書の記載内容は何でもよい. 

司法に委ねるとなれば、契約書の記載内容も法律的に有効かどうかが問われる. 

ところが、専門家が作成しない契約書というのは、法律を理解して記載しているわけではないから、法的に有効な条項になっていない. 


例えば、著作権譲渡契約. 「全ての著作権を譲渡する」、と書かれた譲渡契約の有効性はといえば答えはNO.


「第61条第2項 著作権を譲渡する契約において、第二十七条又は第二十八条に規定する権利が譲渡の目的として特掲されていないときは、これらの権利は、譲渡した者に留保されたものと推定する」


「全ての著作権を譲渡する」と書いても、翻案権や翻訳権は譲渡されないことが著作権法に書いてある. 


契約書を作ることは簡単ではないし、法律のプロである弁護士とて全ての法律を理解しているわけではない. 


世の中に契約書と称するものはごまんとあるけど、それらのほとんどがいざというときには使えない契約書なのである.